Kindle出版や電子書籍における「固定レイアウト」と「リフロー」の違いと失敗しない考え方

Kindle出版や電子書籍における「固定レイアウト」と「リフロー」の違いと失敗しない考え方

電子書籍を出版する際、最初に突き当たる大きな壁が「固定レイアウト」と「リフロー」のどちらを選ぶべきかという問題です。この選択を誤ると、読者から「読みづらい」という低評価を受けてしまったり、制作の手直しに膨大な時間を費やすことになります。

結論からいうと「文字中心の本なら迷わずリフロー、デザインや図版が主役の本なら固定レイアウト」を選ぶのが鉄則です。

本記事では出版を担当してきた編集者が実務目線でそれぞれの特徴と判断基準を解説します。

電子書籍の最大のメリットは「デバイスを選ばず読めること」

例えば、CanvaやInDesignで作り込んだデザインをそのままKindle化したい場合、「固定レイアウト」を選べば、PDFや画像化するだけで簡単に本が完成します。しかし、それをスマートフォンで読む読者にとっては、文字が小さすぎて拡大(ピンチイン)を繰り返さなければならない、ストレスの多い読書体験となってしまいます。

電子書籍の最大のメリットは「デバイスを選ばず読めること」です。このメリットを最大限に活かすか、デザインの再現性を優先するか。その判断基準が必要となります。

まずはそれぞれの形式の特徴を知ることからはじめましょう。

固定レイアウト(Fixed Layout)とは

固定レイアウトは、簡単に言えば「全ページを画像として固定した形式」です。紙の本をスキャンしたような状態をイメージしてください。

特徴

  • ページ内の文字や画像、図解の配置が固定される。
  • PDFや連番画像(JPEG/PNG)から作成される。
  • 読者が文字サイズやフォントを変更することはできない(媒体によるが拡大は可能)

メリット

  • 複雑な図解、写真、フォント配置が一切崩れない。
  •  CanvaやInDesignから出力したPDFを「Kindle Create」などのツールで変換するだけで済むため、いわゆるコーディング知識が不要。

デメリット

  •  画面の小さい端末では文字が極小になり、スマホユーザーは非常に読みづらい。
  • 本文の全文検索、マーカー(ハイライト)などの機能が利用できない。

向いている書籍の例

  • 写真集、絵本、漫画
  • 雑誌、カタログ

リフロー(Reflowable)形式とは

リフローは、「表示する画面サイズに合わせて、テキストが流動的に再配置される形式」です。ウェブサイトの表示に近い仕組みです。

特徴

  • 読者が電子書籍を閲覧する媒体を操作し、自分の好みで文字サイズ、フォント、行間、背景色を自由に変更できる。
  • テキストデータ主体で構成される。画像も挿入することが可能。
  • 画面の大きさに応じて、1ページに収まる文字数が自動的に最適化される。

メリット

  • スマートフォン、タブレットなど、あらゆるデバイスで快適に読みやすい。
  • 辞書検索、ハイライト、メモ、全文検索など、電子書籍ならではの機能がすべて使える。
  • ファイル容量が非常に軽い。

デメリット

  • 画像と文章の配置を厳密に固定できない。図解のすぐ隣に説明文を配置したつもりでも、読者の文字サイズ設定によっては次のページにズレることがある。
  •  Wordのスタイル機能を正しく使う、あるいはEPUB形式の知識がある程度必要。

向いている書籍の例

  • 小説、エッセイ、コラム
  • ビジネス書、自己啓発本、実用書(文字中心のもの)

 固定レイアウトとリフローの違い【比較表】

制作を始める前に、以下の表でどちらの形式が自分の本にふさわしいか最終確認してください。

比較項目 固定レイアウト リフロー
レイアウト 完全に固定(崩れない) 流動的(端末により変化)
文字サイズ変更 不可(画面全体を拡大するのみ) 自由に変更可能
主な対応端末 タブレット、PC推奨 すべての端末(スマホにも最適化できる)
制作難易度 低(PDF/画像から作成) 中〜高(Word/EPUBの整形)
機能(検索・辞書) 利用不可 利用可能

よくある失敗例

ケース別に失敗パターンを紹介します。

ケース1:固定レイアウトを選んで後悔する(ビジネス書)

フリーランスデザイナーに安価で制作を依頼。「図解が数枚あるから」という理由で、Canvaで全ページをデザインし、固定レイアウトで出版。

【結果】スマホ読者から「文字が小さすぎて読めない」という星1レビューが付き、売上が下がる。リフローに作り直すには、Wordで組み直す膨大な作業が発生した。

ケース2:リフローを選んでレイアウトが崩れる(図解が多い事例集)

図解とその説明文が一体となって意味を成す本を、Wordの原稿のままリフロー形式で制作。

【結果】読者が文字サイズを大きくした瞬間に、図解と説明文が別々のページに分断されるなど、内容が伝わりにくい本になってしまった。その後、PDFデータを購入者向けに配布することに。

電子書籍のレイアウトの選択は執筆を始める前からするのがおすすめ

その理由は、単に「見た目」の問題ではなく、執筆の進め方や思考のプロセスそのものが形式によって根本から異なるからです。事前に決めておくべき主な理由は以下の3点に集約されます。

文章の書き方

リフロー形式は、読者が文字サイズを変えるため「ページ」という概念がありません。そのため、「次ページの図にある通り」といった場所を特定する表現が使えず、論理的な見出し構成で読ませる工夫が必要になります。一方、固定レイアウトは紙の本と同じく誌面が固定されているため、見開き効果を狙ったり、特定のスペースに文字を収めたりする「編集作業」を執筆と同時に行うことになります。

図解や画像の設計

リフロー形式では、スマホの小さな画面で図の中の文字を読ませることは難しいため、図解は極力シンプルにし、詳細な説明は本文テキストで行う必要があります。対して固定レイアウトでは、図の中に詳細な説明を書き込むインフォグラフィックのような手法が自由に使えるため、図解の作り込みの段階からゴールが大きく変わります。

使用ツールの不一致

リフローを目指すならWordやGoogleドキュメントで「文章の構造」を作ることに集中すべきですが、固定レイアウトなら最初から枠組みを決めて、CanvaやInDesignなどのデザインツール上で執筆を進めたほうが効率的なる場合もあります。執筆が終わった後に「やっぱり形式を変えよう」となると、図解の作り直しや改行のやり直しなど、数十時間の作業が無駄になってしまうリスクがあります。

電子書籍の成功は、適切なレイアウト選びから始まります。令和出版では、あなたの原稿の内容やターゲット読者に合わせた最適な形式をご提案いたします。形式選びで迷われた際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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記事の著者:田中 千夏(編集)

文学部卒業。アルバイトとして観光雑誌の編集に携わったのをきっかけに、以降15年以上にわたり編集業務に従事。大学卒業後はWeb制作会社にて、ライティングやデザインといった編集業務を担当。大手企業の企画編集経験を経て、現在は令和出版にて編集部門にて企画・制作進行管理と実務編集を兼任。

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